【インタビュー】「好き」を諦めない!複業からフリーランスへ転身した彼の挑戦

「好きなことを仕事にできたら、どんなに素晴らしいだろう」
多くの人が一度は抱く、そんな願い。しかし、安定した現在のキャリアを捨てるリスクや、未来への不安から、その一歩を踏み出せずにいる人も少なくありません。
今回お話を伺ったのは、食品メーカーの営業職として働きながら、副業で始めた動画制作の道を究め、2年前にフリーランスのビデオグラファーとして独立した、武田健司さん(仮名・32歳)。
会社員という安定した立場から、どのようにして「好き」を「仕事」へと育て上げていったのでしょうか。副業・複業から始め、自分らしい「魂の仕事」を見つけ出した彼の挑戦の軌跡には、自立を目指すすべての人へのヒントが詰まっていました。
会社員時代の「充実感」と、心の奥にあった「渇望」
聞き手: 本日はよろしくお願いいたします。まず、武田さんが会社員だった頃のお話から聞かせてください。当時はどんなお仕事をされていたのですか?
武田さん: こちらこそ、よろしくお願いします。大学を卒業してから約7年間、中堅の食品メーカーで営業として働いていました。ルート営業が中心で、既存のお客様との関係構築にはやりがいを感じていましたし、会社の雰囲気も良く、安定した毎日には満足していました。
聞き手: 安定した毎日。それでも、何か変化を求める気持ちがあったのでしょうか?
武田さん: そうですね。30歳を目前にした頃から、「このままで、自分の人生は本当にいいのだろうか?」という問いが、頭から離れなくなりました。営業の仕事は好きでしたが、心のどこかで「自分自身のクリエイティビティを形にする仕事がしたい」という、渇望のようなものがあったんです。学生時代に映像制作のサークルにいたこともあり、その頃の「何かを創り出す喜び」を、もう一度味わいたいという思いが、日に日に強くなっていきました。
「好き」を諦めないための、賢明な第一歩としての「複業」
聞き手: その「創り出したい」という思いが、複業に繋がったのですね。
武田さん: はい。いきなり会社を辞めて独立する勇気は、私にはありませんでした。だから、まずは「好き」を諦めないための、そして「本当に仕事にできるのか」を試すための「実験」として、副業から始めることにしたんです。
聞き手: 具体的には、どんなことから始められたのですか?
武田さん: 最初は、友人の結婚式の余興ムービーを、趣味の延長で作ったのがきっかけです。それが思いのほか好評で、「これなら、少しお金をいただいても通用するかもしれない」と感じました。そこから、クラウドソーシングサイトに登録し、「1本5,000円」といった、ごく小さな案件から受け始めました。当時は、最新のIT・デジタル編集ソフトの知識もなかったので、YouTubeのチュートリアル動画を見ながら、必死で勉強しましたね。
聞き手: 本業との両立は、大変だったのではないでしょうか。
武田さん: 正直、きつかったです(笑)。平日の夜や、土日のほとんどを複業に充てていましたから。でも、不思議と苦ではなかったんです。やればやるほどスキルが上がり、お客様から直接「ありがとう」と言われる。その喜びが、本業の疲れを吹き飛ばしてくれました。この時期に、時間管理能力と、個人事業主としての基礎体力が身についたと思います。
「お試し」から「本気」へ。独立を決意した瞬間
聞き手: 複業から、専業のフリーランスになることを決意されたのは、どんなタイミングだったのですか?
武田さん: 複業を始めて1年半ほど経った頃、複業での月収が、本業の給料を初めて超えたんです。それが一つの大きな自信になりました。そして、決定打となったのは、ある中小企業様から、年間のプロモーション映像制作という、長期の大型案件をご依頼いただけたことでした。その時、「これはもう、片手間ではできない。本気で向き合うべき時だ」と、腹を括りました。
聞き手: 独立にあたって、不安はありませんでしたか?
武田さん: もちろん、ありました。安定収入がなくなることへの恐怖は、最後までありましたね。でも、それ以上に「自分の可能性を試したい」「人生のハンドルを、自分で握りたい」というワクワク感の方が、勝っていたんです。複業期間中に、ある程度の貯金と、数社のクライアント様との信頼関係を築けていたことも、大きな心の支えになりました。
「魂の仕事」がもたらす、本当のウェルビーイング
聞き手: 最後に、フリーランスとして「魂の仕事」をしている今、何を感じますか?そして、これから起業や自立を目指す読者へ、メッセージをお願いします。
武田さん: 今、心から言えるのは、「自分の人生を生きている」という、揺るぎない実感があるということです。もちろん、大変なこともあります。でも、自分の創造性が誰かの役に立ち、それが直接、感謝と豊かさになって返ってくる。この循環の中に身を置けていることが、何よりの幸せであり、ウェルビーイングだと感じています。
もし、あなたが今の働き方に少しでも疑問を感じているなら、どうかその「好き」という心の声を、無視しないでください。いきなり全てを捨てる必要はありません。まずは、週末の数時間から始められる、小さな副業という一歩を踏み出してみてください。
その小さな一歩が、あなただけの「魂の仕事」を発見し、想像もしていなかったような、豊かで自由な未来へと繋がる、最も確実な道なのですから。