【インタビュー】「会社を辞めてよかった」離職が導いた、本当の自分らしい働き方

安定した会社員生活。それは、多くの人が求める、一つの「正解」の形かもしれません。しかし、その安定と引き換えに、心の奥で「本当にこのままでいいのだろうか?」という声を押し殺している人も、少なくないのではないでしょうか。

今回お話を伺ったのは、都内のIT企業でマーケターとして活躍後、3年前に独立し、現在はフリーランスのWebコンサルタントとして活動する佐藤恵さん(仮名・34歳)。

「会社を辞めて、本当によかった」

そう穏やかな笑顔で語る彼女は、離職という大きな決断を経て、どのようにして「自分らしい働き方」を見つけ出したのでしょうか。起業や自立を考えている、すべての人に贈る、勇気とヒントに満ちたインタビューです。

「安定」という名の鳥かごで感じていた、消えない違和感

聞き手: 本日はありがとうございます。まず、佐藤さんが会社を辞めようと決意した、そのきっかけから教えていただけますか?

佐藤さん: はい。勤めていた会社は、人間関係も良く、待遇にも大きな不満はありませんでした。客観的に見れば、とても恵まれた環境だったと思います。でも、入社して5年が経った頃から、日に日に「違和感」が大きくなっていったんです。

聞き手: 違和感、ですか。

佐藤さん: ええ。大きな組織の中で、私は「マーケティング部の佐藤」という「役割」を演じている感覚でした。会社の目標のために、自分の時間とスキルを捧げている。それは尊いことだと頭では理解していても、魂が「これは、あなたが本当にやりたいことじゃない」と、ささやき続けているような…。まるで、居心地の良い、金の鳥かごの中にいるような感覚でした。自分の仕事が、最終的に誰のどんな喜びに繋がっているのか、その「手触り感」が全くなかったんです。このままでは、自分らしさを見失ってしまう。その恐怖が、独立を考える最初のきっかけでしたね。

会社員時代に始めた「複業」が、未来への滑走路になった

聞き手: とはいえ、安定した会社を辞めるのは、大きな決断だったと思います。何か準備はされたのでしょうか?

佐藤さん: もちろんです。衝動的に辞めたわけでは全くありません。私が本格的に準備を始めたのは、退職する約2年前からです。その時に始めたのが、複業・副業でした。

聞き手: 複業ですか!具体的にはどんなことを?

佐藤さん: 当時、本業で身につけたWebマーケティングの知識を活かして、まずはクラウドソーシングサイトで、小さな個人事業主の方のSNS運用のお手伝いや、ブログ記事のSEO対策といった、単発の案件から始めました。

聞き手: それが、自信に繋がったわけですね。

佐藤さん: まさに。初めて会社の看板なしに、自分の名前で仕事を受注し、クライアントから直接「ありがとう」と言われた時の感動は、今でも忘れられません。給料とは全く質の違う、自分の価値が認められた証のように感じました。この副業という「お試し期間」があったからこそ、「自分のスキルは、外の世界でも通用するんだ」という確信と、最低限の顧客基盤を作ることができたんです。フリーランスを目指すなら、この滑走路を作る期間は、絶対に必要だと思います。

フリーランスになって初めて見えた「本当の豊かさ」

聞き手: 実際に独立されてから、会社員時代と比べて、一番変わったことは何ですか?

佐藤さん: 全てですね(笑)。一番大きいのは、「時間の使い方」と「お金の価値観」です。会社員時代は、決められた時間、会社にいることが仕事でした。でも今は、いつ、どこで、誰と働くかを、全て自分で決められます。最新のIT・デジタルツールを駆使して、午前中は集中して作業し、午後はインプットの時間にする、といった主体的な働き方ができる。これは、何物にも代えがたい自由です。

聞き手: お金の価値観、というと?

佐藤さん: 収入は不安定になりましたが、不思議と会社員時代より心は穏やかです。なぜなら、いただく報酬の一つ一つに、クライアントからの「感謝」というエネルギーが乗っているのを感じるからです。自分のスキルと時間が、ダイレクトに誰かの役に立っている。この手触り感こそが、私が求めていた「本当の豊かさ」なのだと気づきました。

孤独じゃない。だから、冒険は続けられる

聞き手: フリーランスというと、孤独なイメージもありますが、その点はいかがですか?

佐藤さん: 確かに、一人で全ての責任を負うプレッシャーはあります。だからこそ、意識的に「繋がり」を求めるようにしています。オンラインのフリーランスコミュニティに参加したり、コワーキングスペースを利用して、他の個人事業主の方と情報交換したり。同じように自立を目指して奮闘している仲間の存在は、何よりの心の支えになります。孤独じゃないと知っているからこそ、この冒険を続けられるんです。

聞き手: 最後に、かつての佐藤さんと同じように、今の働き方に悩んでいる読者へ、メッセージをお願いします。

佐藤さん: もし、今の場所に違和感があるのなら、その心の声を、どうか無視しないでください。いきなり起業や独立という大きな決断をする必要はありません。まずは、あなたが「好き」だと感じる分野で、小さな副業を始めてみてください。それは、あなたの可能性を試す、最も安全で、最も確かな一歩です。

その一歩が、あなただけの「魂の仕事」へと続く、壮大な物語の始まりになるはずです。自分の人生のハンドルを、自分自身の手に取り戻す。その喜びを、一人でも多くの人に味わってほしいと、心から願っています。

目次